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わいの連れは、探しものが見つからんかったんやが、つらつら察するに、探しものなんぞ金輪際なかったんやろ。やっこさんの了見そっくりそのままに立ち回る手合いは、他にも大勢いてたよってにな。おのれの娘を捜しまわるおかんは、いても、おのれのかみさんを捜しまわる亭主は、いても、おのれのおかんを捜しまわる娘や、おのれの亭主を捜しまわるかみさんなんぞがいてた試しは、とんとあらへん。ことによったら、上を下への乱痴気騒ぎがきわまって、どこかの部屋で寝こんでしもたわなどと、のたまうのが関の山や。それは、ありうる話やなと、わいは、わいで自分に言い聞かせるのやが、やっぱ、ありそうにもないか。 とそこへ、ベネチアンマスクを着けた女が1人、わい、めがけてとんでくる。 「あんたなの?」と、よう訳がわからんが聞いてきよる。 「わいでおます」とわいもわいとて嘘偽りなしの自信満々で返す。 「そのフードケープで見分けがついたけど、今夜は、わかんないわね。パキータも来てるのよ。もっとも、ダンナが俺も一緒についてくって、きかなかったんだけど、一体全体、どないしてチケット、ゲットしたものやら」 「そら、興ざめもええとこやな」 「でしょう。間の悪さったらないわよ。2人であんたを見かけたんだけど、あの子、自分からあんたに話しかけるなんて、危ない橋は、よう渡らんいうて、私をあんたのところによこしたってわけ。それで、こう伝えろって。明日は、サルテンの横丁で絶対にあんたとデートしちゃうんだからとね」などと緋色のフードケープにループの白リボンが言う・・・ 「ええで」 「行きまんのか?」 「決まっとるやんけ」 「おいおい、ほんなら、あんさんのかみさんは、どないしまんのや」と全身コルヌコピアの小さな角でびっしりの衣装をまとう奇天烈な御仁に、黒のフードケープが、お揃いで同じなりをした連れと腕を組んで問いかける。 「今頃は、お家でおねんねでしゃろ。ウチのかみさん、さんざん口説いたあげくに、踏ん切りつかずに出かけんかったわけやね。遊びが嫌いや言うて、あれの上を行く堅物は、いてまへんで」 「ほいでもって羽を伸ばせるとは、物わかりのええかあちゃんやな。今夜は、午前様のつもりでっか?」 「いんや、4時まででおま」 「あんさんの身のためや、それがええで」 それをしおにコルヌコピアの先生は、その場から立ち去りよったが、こんな言葉が切れ切れで耳に入ってくる。 「だんさん、つゆほども疑ってなかったで」 「疑いようがないやないの?私が出たのは、あの人の1時間後なのよ・・・」 「4時って言うてたか?」 「そうよ」 「時間はあるな。女中の方は、ほんまに大丈夫なんかいな?」 「心配あれへん。というのはね・・・」 人の群れが怒濤のごとく押し寄せ、わいは、スケベ心の糸が断ち切れる。「あたしよ、あたし、わかんない?」、「あんたでしょ、わかるわよ」などなどのフレーズが繰り返しあふれ、それに2人の喋々喃々が紛れていく。 そないすると、今宵、わいは、浮気もんの連中と同じフードケープをかぶってきたわけやが、これも星の巡り合わせが、わいに味方しよったいう見方もできまんな、ちゃいまっか?夜のとばりが降りたら、火遊びの現場をおさえて、どづき倒したろと待ちかまえていた面々と同類のケヴェードよか、ついとったいうのは、確かやな。 「ちょいと、ちょいと、やっとおにいさんを見つけたわよ」とベネチアンマスクで華奢な、別の女が、わいの腕をつかみながら話しかけてくる。その口調は、ソフトやが、望みが叶って上ずっている。「あたしのこと、さんざん捜し回ったんやない?」 「請け合うが、それは、ないで。なんせ、奥さんと会ういうのは、頭になかったさかいな」 | Entry #22282 — Discuss 0 — Variant: Kansai
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我が友の探し人は見つからなかった。私に言わせれば、探さなかったのではなく、正に他の多くの人たちに起こるのと同じことが起こっただけだ。母親たちは自分たちの娘を探したし、夫たちは自分たちの妻を探したが、母を探した娘はたった一人もいなかったし、夫を探した妻も一人もいやしなかったのだ。 恐らく、人々が言っていたように、彼らはどこかで混乱のうちに眠りに落ちてしまったのだろう・・・。あり得る、と私は自分を振り返って思った。あり得るけど、可能性は高くない。 マスクを着けた人物が私のほうに突進してきた。 「あなたですか?」と、謎めいた調子で訊ねられた。 「私です」と答えた。ウソではない。 「あの仮面の人とは知り合いですが、今夜は無茶苦茶です。パキータならあちらにいますよ。夫は絶対に来ると決めているようです。どこで切符を入手したのか、さっぱり分かりませんがね。大変だ! せっかくのチャンスだったのにね! 私たち、あなたを見かけたんだけれど、彼女は自分では話しかける勇気はなくって、私を寄越したんです。明日、間違いなく『サルテン』でお目にかかりますって伝えてくれとね。仮面を脱いで白いリボンで・・・」 「いいですよ」 「ほんとうに?」 「きっと行きます」 「ところであなたの奥さんは?」と、小さなツノがたくさんついた奇妙な服を着た人物が言った。顔に着けたのと同じ、黒い仮面を腕にも着けていた。 「今時分は眠っていることでしょう。自分のことで精いっぱいで、一緒に来るように言ってやることまではできなかったんです。お陰さまで敵を増やさずに愉しめます」 「そのほうがあなたの徳が守れて気楽でしょう。ここには一晩中いるつもりで?」 「いや、4時までです」 「そつはいい」 そう言うと、ツノが付いた服を着た者は立ち去った。会話が切れ切れに聞こえた。 「なにも疑ってないようだよ」 「そんなこと、あり得るかな? あいつの1時間後に出かけたんだから・・・」 「4時って言ってたか?」 「ああ」 「時間は十分あるな。メイドのほうは大丈夫か?」 「使用人はいないんだ、だって・・・」 人々は渦のように動き回り、私の好奇心の糸が途切れた。会話の他の語句は繰り返し聞こえる声に紛れてしまった。 「私を知っているか」「私は君を知っているよ」などなど。 じゃあ、今夜、私のスターは他の愛好家たちと同じ仮面を着けてこなかったようだ。間違いなくケヴェドも幸せそうだった。今夜、殴りつけてやりたいと思った奴は一人や二人ではあるまい? 「ねえ! ねえったら! やっと見つけた」と、マスクを着けた、別のやせ形の人物が私の腕を掴みながら声をかけてきた。望みが叶って興奮した様子の、柔らかく声だった。「私のこと、長いこと探してた?」 「いや、探してなかったよ。君が来てるとは思わなかったから」 | Entry #19933 — Discuss 0 — Variant: Not specified
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私の友達は探し物が見つからなく、私が想定した通り、本人に起こる、ほかの出来事と同じように何かを探した訳ではなかった。母親はそう、自身の娘を、夫人は女性を探し求める者があるが、母親には娘が、夫人には女性が見つからない。恐らく彼らは言おうとしていたであろうー混乱の中で眠っているままだとーそうかもしれないと自分に言い聞かせるけど、決してそうではない。 ある仮面が私を刺激させてくれた。 「あなたなの?」と私に不思議に問いかけた。 「私だ」と私は偽ることなく答えた。 「ドミノと会ったけど、今夜はできない。パキータは向こうにいる。主人は行こうと心がけているが、一体どこでチケットが手に入るのかが分からない。こんな機会があるのに。本当に残念!私たちはあなたを見ているよ、敢えてあなたに直接伝えようとせずに、明日は間違いなく、フライパンで会うようにと私を送らせた。ドミノが蘇生して、白いリボンを。」 「いいよ。」 「そっちは」 「見逃せない」 「そして、お前の彼女は」と彼は殊に珍しい物体に貧乏そうに着物を着させた。まさに片腕の持ち主の黒いドミノ。 「今から寝ようと。頑張ったが、私は未だ行くことを決めていないままだ。これほど、娯楽の敵はいないだろう」 「自分の美徳に落ち着く訳だね。ここに一晩中いると思うの?」 「違う。4時までだ。」 「うまくやる」 こうして、紅から遠ざかり、こんな言葉を耳にした。 「何も中止になってない」 「どうしてそういう事が。もし一時間あとに来たら、彼が」 「4時と言ったのに」 「はい」 「時間がある。メイドについて、確かですか」 「全く注意していない、何故なら。。。」 ある言葉の波が私の好奇心を切り離した。「私は君を知っているの」、「君は私を知っているの」等の繰り返し声にほかの言葉が混じってしどろもどろになった。 ほかの恋人達と同じような、私の同等の星が今夜、現れなかったようで、ケーヴェドは一層嬉しそう気分で彼らに勝ち破ると期待していた。 「やった!やった!やっと君を見つけた」と他の細い仮面が私の腕を掴んで柔らかい声で満足げに言ってくれた。「結構私を探してくれたでしょう」 「別に。あなたを見つけると思わなかったから。」 | Entry #22270 — Discuss 0 — Variant: Standard-Japan
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